父(被相続人)は、生前、税理士のアドバイスにより、遺言書を作成することにしました。まず、税理士が、父の全財産を洗い出し、その後、税理士と弁護士が協力して、父の希望を聞き、遺言書の原案を作成しました。

 遺言書の原案を作るにあたり、(配偶者と家を継ぐ長男を除く)他の相続人は、遺留分の半分程度の金額を相続することとし、その他の財産については、母と家を継ぐ長男が、半々くらいの割合で相続することとしました。
  ※ 遺留分とは、いくら遺言をしても奪うことができない、相続人の取り分を言います。原則として、本来の相続分の半分が遺留分になります。

 本来は、(配偶者と家を継ぐ長男を除く)他の相続人について、遺留分に相当する財産をあげる遺言をする方がよいのですが、全体の財産からいって、それが難しい状況だったので、遺留分の半分程度をあげる遺言とせざるをえませんでした。

 遺言書は公正証書で作成することとしましたが、父が病気で入院しており、公証役場まで行くことができないため、公証人に、父が入院している病院まで出張してもらって、遺言書の作成を行いました。

 その後、父が亡くなり、四十九日が過ぎた時点で、他の相続人に連絡して、集まってもらい、税理士、弁護士も出席して、遺言の存在とその内容を、遺言のコピーも渡して説明しました。
 また、不動産の所在、その評価額、預金の所在、その金額など、遺産全体の内容がわかるような資料も作成して、そのコピーも相続人全員に配布しました。
 遺産分割の話し合いをする場合、なにか隠し事をしているのではないか、というような不信感をもたれるのが最悪ですので、極力、そのようなことがないようにしました。

 その後、遺言書の内容を実現するため、遺言執行者となった弁護士、税理士が、遺言執行を行い、次のことを行いました。
■ 預貯金 被相続人の口座を解約して、遺言に従って配分。
■ 土地・建物 遺言に従って名義移転
■ 株 遺言に従って名義移転
■ 保険 保険契約者の地位を遺言に従って名義移転

 また、相続人から問い合わせがあったときは、誠実に回答しました。
 また、(配偶者と家を継ぐ長男を除く)他の相続人の方にかかる相続税については、長男がかなりの部分を負担することとしました。

 この結果、不審な点はないと信頼してもらえたのだと思いますが、他の相続人から遺留分の主張をされることもなく、無事に相続を終えることができました。